■ 今 週 の 特 集 ■
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毎週、様々なテーマでお届けします。
ちょっぴり硬派な内容から、芸能ネタまで、幅広く取り上げていきますのでお楽しみに!
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■ サ ボ テ ン ■
皆さん、メキシコといえば何をイメージしますか?「テキーラ」「タコス」「マリアッチ」それとも「ソンブレロ帽子を被った髭オヤジ」でしょうか?
しかし、植物だけに限定すれば殆どの人が「サボテン」を思い浮かべるのではないでしょうか?。メキシコに行けば、見渡す限りサボテンの風景が見られる・・・と。ま、実際に行った人は分かると思いますが、少なくともメキシコシティに住んでいる場合は車で何時間も行かなければそんな風景にはお目にかかれないんですけどね。
とはいえ、サボテンの魅力はその個性的な風貌や砂漠の中を生き抜く生命力だけではありません。メキシコでは実に多様な形でサボテンは庶民の暮らしに根づいているのです。そこで、今回はその一部を、豆知識的に紹介していきたいと思います。
【サボテンはメキシコ原産】
サボテンはスペイン語で"cactus"(カクトゥス)。メキシコを中心に南北アメリカ大陸の砂漠から生まれた植物です。自生地は海抜2千メートル以上の高地や乾燥地帯がほとんどですが、アマゾンなど高温多雨の熱帯ジャングルにも広範囲に分布しており、適応能力がきわめて高い摩訶不思議な植物です。植物学的にはサボテン科で、独自の貯水機能を持つ「多肉植物」の一つのグループ。その種類は3,000以上に及びます。

【国旗に描かれたサボテン】
メキシコの国旗は緑・白・赤の3色で、それぞれが独立・信仰・団結を表してます。ユニークなのが真ん中の白い部分に描かれている鷲(ワシ)の図柄。蛇をくわえてサボテンの上にとまっています。これは14-16世紀にメキシコ中央高原を中心に一大王国を築いたアステカ族の伝説をモチーフにしたもの。アステカ族は1325年(一説では1345年)、「ヘビをくわえてサボテンにとまったワシがいる場所が約束の地だ」という神のお告げに従い、テスココ湖に浮かぶ湿地帯にアステカ王国の首都「テノチティトラン」(現在のメキシコシティ)を建設したのです。このころは、メキシコ盆地にもサボテンが生い茂っていたのでしょうか・・・・?
【庶民の野菜ノパール】
メキシコ人はサボテンを食べる・・・・といっても何でもかんでも食べるわけではなく、食用とされているのはスペイン語で"ノパール"(Nopal)と呼ばれる「ウチワサボテン」。市場やスーパーで、茎節の部分がトゲを抜いた状態で普通に売られています。代表的な調理方法は、そのままフライパンで焼いて塩こしょうで味付けした「サボテン・ステーキ」。また、ゆでてから細かく刻んでサラダやスープに入れたりもします。味にクセがないのでキンピラなど和風料理にも違和感無くなじんでしまう便利な食べ物です。加工品としては、ピクルスのように酢漬けしたものがあります。
ノパールは天然の食物繊維やミネラル、ビタミン等が豊富で、メキシコでは糖尿病の民間療法に利用されています。ミキサーにかけ青汁のように朝ごくっと一杯・・・(注:マズイかどうかは飲んだことがないので分かりません)。アメリカや日本でも、「古代アステカに糖尿病は存在しなかった!」を宣伝文句にノパールのエキスが健康サプリメントとして売られています。
【果物トゥナ】
上述のノパール(ウチワサボテン)の果実"トゥナ"(Tuna)も旬の6-8月にかけ、メキシコの食卓を彩ります。大きさはキウイぐらいで中身はとってもジューシー。甘いけれどさっぱりした味わいです。
さて、サボテンの果実。遙か古代のメキシカンの喉も潤していたようで・・なんと紀元前1万年頃の洞窟遺跡から遺物が出土されているそうです。

【健康食品・化粧品】
もっともポピュラーなのが「アロエ」。中でもメキシコ産としてポピュラーなのが「アロエベラ」という種類。サボテンに風貌がそっくりで同じ多肉植物ですが・・・分類学上はユリ科。しかも原産地はアフリカです。メキシコでは主に輸出向けにプランテーション栽培されています。世界各地で古くから万能薬として重宝されてきたアロエ。日本でも最近は健康飲料や、ヨーグルト、シャンプー、化粧品などアロエの名がついた商品を多く目にするようになりました。
【天然色素】
ウチワサボテンの仲間コチニールウチワに棲息する"コチニージャ"(cochinilla)(日本名:エンジムシ、コチニール貝殻虫)の雌から抽出される動物性の天然色素。コチニール色素またはカルミン色素と呼ばれ、臙脂(えんじ)色や深紅色の染料になります。メキシコでは先進国向けの輸出産物になる高級品。日本では昔から着物の染織に重宝されていたようですが、現在ではケチャップなどの食品の着色料として広く使われています。
【石油資源】
ユーフォルビア属のサボテンには石油に類似した炭水化物が含まれており、メタノール燃料の2倍のエネルギーで精製すれば十分燃料になるということで、オイルショックの頃(1970年代)には本気で研究開発が行われてました。しかし、コスト高を理由に生産には至らなかったようです。
【ドラッグ】
"ペヨーテ"(Peyote)と呼ばれるサボテンにはメスカリン系の幻覚性物質が多量に含まれており、原産地であるメキシコ中北部を中心に有史以前から宗教儀式に用いられてきました。(アステカ族も、あの有名な生け贄の儀式の際に使用してたと言われてます。)
メキシコで「ペヨーテ」といえば、なんといってもシエラ・マドレ山脈一帯(ハリスコ州、ナヤリット州)の辺境地に住む先住民族ウイチョール族が有名です。彼らが創り出すアートクラフト(毛糸絵、ビーズ等)は卓越した色彩感覚とデザインで有名ですが、これは土着シャーマニズムの儀式で「ペヨーテ」を摂取した際に得られる宗教的ビジョンを現していると言われています。
この幻覚性サボテン、なんと日本では鳥羽玉(ウバダマ)、通称「トゲ無しサボテン」として園芸店で一般的に売られています(もちろん観賞用としてですが・・・)。ちなみにインターネットで「ペヨーテ」を検索してみると・・・近頃話題のマジックマッシュルーム同様、合法ドラックとしても堂々と販売されており、服用体験者は色彩溢れるサイケデリックなビジョンと恍惚感が味わえると語っております。
ウイチョルー族の毛糸絵

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