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2001.12.24号(自然)

■■ ポインセチア ■■

クリスマスが近づくと街のあちらこちらで見かけるポインセチア。赤と緑のクリスマスカラーが、街路樹のイルミネーションなどとともに華やかな雰囲気をかもしだしてくれます。12月の寒空が似合うこの植物、意外や意外?メキシコが原産地なのです。



【聖夜の花】

欧米で「クリスマス・フラワー」の愛称で親しまれているポインセチア。原産地のメキシコでは「フロール・デ・ノチェブエナ」(聖夜の花)と呼ばれています。その由来には、次のような伝説があります。

クリスマスイブ(ノチェブエナ)の夜。両親が病気で 貧しい農家の娘マリアは、イエス様に何も贈り物ができないと悲しみに暮れていました。村の教会では人々がイエス様の生誕を祝うため豪華な贈り物を持って集まっていました。その様子をわびしく眺めているだけだったマリアのそばに、突然、見知らぬ老人が現れ、こう言いました。「心からの贈り物であれば、何だっていいんだよ」。そこで少女は地面に落ちていた雑草を拾いブーケを作り、教会の祭壇に捧げました。その様子を見た村の人々が小馬鹿にしたため、マリアはさっと頬を赤らめました。すると頬の赤が雑草の葉に移り、美しい赤色に染まったのです。それ以後、この植物は「聖夜の花」として知られるようになりました。

【アステカ族にとっては実用品】

コロンブスがアメリカ大陸を発見する以前から、メキシコのアステカ族はポインセチアを"CUETLAXOHITL"という名で呼び、栽培していました。スペイン植民地時代にフランシスコ修道会のベルナルディノ・デ・サアグン修道士(1499-1590)が記した『ヌエバ・エスパーニャ諸事物概史』によると、アステカ族は「苞(ほう)」と呼ばれ赤く色づいて花のように見える部分から赤紫色の染料を取り出したり、乳白色の樹液を解熱剤として利用するなどしていました。(花は、中央の黄色の豆状の部分)

また、ポインセチアが自生するメキシコ南部ゲレロ州の先住民、チョンタル族の間にはこんな言い伝えがあります。アステカ帝国の支配下で重税などに苦しんでいたチョンタル族は、あるとき帝国に反旗を翻しました。しかし強靱なアステカ族を打ち負かすことはできず、数多くの勇敢な戦士たちが死んでゆきました。その死体から流れる落ちる血・・・そこから「新しい生命」を象徴するかのように赤い葉が生えてきたのです・・・。

【ポインセチアの名前の由来は・・・】

ポインセチアがキリスト教色を強めたのが、17世紀ごろ。銀鉱の街タスコ(Taxco)周辺で布教活動を行っていたフランシスコ修道会が、クリスマスの宗教行列(プロセシオン)にポインセチアを使ったのが始まりでした。

しかし、ポインセチアを世界に知らしめたのは修道士ではなく、米国人外交官でした。1824-1829年に米国の初代駐メキシコ大使を務めた、ジョエル・ロバーツ・ポインセット(Joel R. Poinsett)氏。そう、ポインセチアの名は彼の名字に由来しています。植物学に造詣の深かった氏は、タスコで出会ったポインセチアを米国に持ち帰りました。その後、ヨーロッパでは1834年に紹介されています。

キリスト教では、赤い色はイエス・キリストが十字架の上で流した血を、緑は永遠の命を意味します。この2色をあわせ持つポインセチアは、欧米であっという間にクリスマスフラワーとして定着しました。日本には明治の中頃に紹介されましたが、クリスマスの花として流行しはじめたのは戦後、クリスマスの習慣が定着してからのことです。ちなみに、和名は猩々木(しょうじょうぼく)。猩々(しょうじょう)とは中国の伝説上の動物で、大酒飲みのためにいつも真っ赤な顔をしており、その顔色がポインセチアと似ているということから名前がついたのです。ちなみに花言葉は「私の心は燃えている」。ア・チ・チ・・・!?

【ポインセチア(Poinsettia)の基礎知識】

クリスマスのデコレーションとして、また贈答品としても人気のあるポインセチアですが、商業目的の栽培が始まったのは19世紀です。メキシコにも多くの栽培農家がありますが、最も有名なのがハリスコ州のガルデロン兄弟。ポインセチアの鉢植えを年間60万出荷しており、1996年にはカトリックの祝祭行事に9万8000個を寄贈、ギネスに載ってしまいました(!?)。


【学名】Euphorbia pulcherrima
【和名】猩々木(ショウジョウボク)
【科名】トウダイグサ科
【花言葉】祝福・博愛・私の心は燃えている。

●赤い部分は花ではなく葉の部分で、花は中心の小さい黄色いところ。冬が近づいて日照時間が短くなると、枝の先の方の葉が赤く染まります。種類は、白、ピンク、クリームなど豊富になってきています。

●置き場所は、日当たりのよい窓辺で10℃程度の温度が理想的。鉢植えで栽培されているものは高さ30〜50cmほどですが、メキシコでは常緑低木で5mまで成長します。

(chiaki)


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