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2005.07.01号(自然)

山田俊彦氏写真展第11回
■■ マリポサ・モナルカ ■■

注:全ての写真の著作権は山田俊彦さんに帰属します。
無断でのご使用はご遠慮ください。
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山田俊彦さんのプロフィール

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写真展第11回目は、10回にひきつづき、ミチョアカン州の話題です。今回は、世界的にも有名な、モナルカ蝶の聖地をご紹介します。こどもの頃、モナルカ蝶の聖地の発見を絵と文章と写真で物語調につづった、大判の本を家の本棚で見つけ、おもしろくて何度も読んだ記憶があります。それがメキシコの話だったと再発見するまではそうとう時間がかかりましたが・・・。実際に訪れることはまだできていないのですが、山田さんの写真を拝見して、「いつか必ず行くぞ!!」と心に決めています。

それでは、写真と山田さんご自身による説明をお楽しみください。

* * * * *

◎◎ モナルカ蝶 不思議が一杯 ◎◎

メキシコは蝶の宝庫でもあります。テレビで放映された事もあり、ご存知の方もおられると思います。

日本はもちろん、世界中に同種の蝶が見られ、各国で切手の図案になっています。幼虫は↓のサイトの切手で見てください。

http://www.asahi-net.or.jp/~CH2M-NITU/madara.htm


メキシコの蝶の標本

餞別の贈り物ですが、モナルカは入っていません。メキシコでは珍しくないからでしょうか?
和名オオカバマダラ 参考URL


メキシコでの生息は昔から知られていましたが、はるばると北米カナダから越冬しに来る事が判ったのは、1975年の事です。長年にわたって研究を続け、ついに車で蝶を追ってここまで辿り付いたトロント大学の昆虫学者、Fred Urquhartによって全貌が明らかになり、一挙に脚光を浴びるようになりました。

ミチョアカン州Anguangueoの僅かな地域に、どうして全米加の蝶が集まるのか? 何故に樅の一種オヤメルの木にしか住み着かないのか? どなたかご存知ありませんか? これは餌では無いようです。

飛来する時は一気に4000kmを直行して来て、標高3000mのオヤメルの森で、毎年12月から3月まで越冬し、雄はここで一生を終え、雌だけが帰国するのです。地面は可哀想な雄の亡骸累々です。


帰りは雌だけが途中で卵を孵化させ、次の代が少しずつ北上しますが、特定の土地に群生するのでは無く、北米全土に分散して過ごします。これを数回繰り返して、やっとカナダと北米の元の土地に辿り付きますが、メキシコの様に一ヶ所ではありません。

帰りは数代目がメキシコに一代で飛んで来ます。空高く群れをなして飛行するので、皆気が付かないようですが、落伍した蝶が落ちて来るのでわかるそうです。帰趨の遺伝子がどうやって伝わるのかが不思議です。

幼虫は、蘿摩(ガガイモ)科の唐綿(トウワタ)の葉しか食べません。これに含まれるアルカロイドによって、体内に毒が蓄積し、鳥に食べられない体になるそうです。鳥の餌食にならないので、この模様をチャッカリ頂いたメスアカムラサキ蝶など、擬態の蝶が沢山います。最近、遺伝子組み替えの植物(玉蜀黍の花粉)の影響で、繁殖が出来なくなる事が懸念されて問題になっている、という記事を読んだ事があります。

カンクーンと同じく、駐在時代に無かったここに行ったのは、90年代に入ってからでした。トルーカからモレリアに行く旧道を約100km、Zitacuaroを右折して40kmで、古い金銀亜鉛の鉱山町Anguangeoに着きます。最近この辺りに新たな鉱脈が発見され、大手鉱山会社が開発に乗り出したので、早晩賑やかな町になるかもしれません。この辺は小さな鉱山が散在し、鉱石運搬の為にZitacuaroから北のMaravatioまで鉄道が敷かれ、今でも線路は残っています。旅客列車もありました。

町に着くと、案内のジープか小型トラックが待ち構えており、ここから悪路を30分の所で降り、さらに30分程歩きます。Anguangueの手前10kmのOcampo付近からも行けます。
10時頃まではオヤメルの木に鈴なりで、これが蝶とは思えないような異様な風景ですが、日が高くなり気温が上がると一斉に飛び立ち、信じられないような羽音の渦に巻き込まれます。寒いので防寒の用意をして下さい。



訪れた時は、保護活動が始まった時期で、管理が厳しく、入山者にガイドが同行して厳しく看視されました。道は外れてはいけない、フラッシュは禁止、禁煙、死んだ蝶も拾ってはいけない、といった状況で、良い写真を撮れるところには入れませんでした。

(天気が良くなかったので、青空に舞う蝶等、何枚かの写真は福本義朗氏から頂いたものです。左の滝の写真は絵葉書です。)

残念ながら直行のバスや定期のツアーは有りませんので、レンタカーか観光業者で車を手配してもらうしかありません。日帰りで十分です。

世界遺産への登録がたびたび話題になっていますが、保護団体が、訪れる人が増えて環境が悪くなるとして反対しているため、進んでいません。鯨と同じで、近くで見るのに制限が厳しくなってくるでしょう。ゲレロネグロの塩田拡張が出荷する船が多くなり、鯨を傷める、と永年許可になっていません。

不思議の数々はもっとあるでしょう。

4000kmも離れた地点に、迷わず全部がどうして集まれるのか?
数代経て、親も行ったことのない場所に、どうやって辿りつくのか?
この一帯数10kmの範囲にしか集まらないのはなぜ?
オヤメルの木にしか群がらないのはなぜ?
こんなに沢山の蝶がここでは何を食べているのか?
わざわざ寒い所に越冬しに来るのは何ゆえ?
雄は一緒に行かずここで一生を終えるのはなぜ? ついて行っても役に立たないから?
北上する時分散して行動するのはなぜ? 一箇所にこれだけの数の蝶の餌になるような唐綿が無いから?
幼虫がアルカロイド毒のある唐綿の葉を食べて、どうして自分は中毒しないのか?
毒のある蝶のデザインをどうしたらまね出来るのか?
南下する時は一気に飛来するのに、北上する時はなぜ数代も掛かるのか・・・?

謎は尽きません。

山田俊彦さんプロフィール

1967年から3年間、駐在員としてメキシコに滞在。その後、仕事で10回以上,遊びを兼ねて数回訪墨し、滞在期間を合わせると延べ5年間ほどになります。その間撮った写真が数千枚!きっちりPCに保存されていて、お宅を訪問したayaもkanaeもひたすらその整理術に脱帽。。。メキシコ以外の旅行もたくさんなさっており、今一番のお勧めは「チュニジア」。メキシコについては鉄道もお詳しく、今ではほとんど不可能な「メキシコ・列車の旅」をたくさん実現なさったとのこと。音楽から民芸品から食べ物から、何から何までメキシコのことを心から大切に思っておられるのが、暖かなお話ぶりから伝わってきました。

(kanae)


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