エムカとの日々 −エムキータの誕生日近づく!の巻−

早いもので、愛犬エムカの1才の誕生日が近づこうとしている。
エムカは1995年の11月20日、メキシコ独立記念日に生まれた。だから毎年、彼女の誕生日は国民の休日。
そこで先日、私は真面目くさってアビラ家の末娘ロサウラに言った。

「ねぇ、もうすぐエムキータの誕生日だから、盛大にパーティしなくちゃね。何せ、初めての誕生日だからね。近所の子供とか犬たちも呼んでさ。でもさ、やっぱりパーティの雰囲気こわすといけないから、野良犬呼ぶのはやめとこうか。あとさ、パーティのコンセプトはエムカのすきな『骨』かなぁ…。」

メキシコ人にとって、誕生日は幾つになっても大切で、お祭り好きのアビラ家なんて、親戚やお友達は勿論、お友達のそのお友達まで呼んで盛大にお祝いをする。特に、祝う相手が子供の場合、毎回、ディズニーのプーさんやワーナー・ブラザーズのバックスバニーのようなアニメのキャラクター、あるいはバービー人形や飛行機といった、その子の好きなものを選んで、ケーキはもとより、飾り付けや紙皿・紙コップ、そしてピニャタ*に至るまで絵柄を揃えるのだ。

(*ピニャタ:前述のようなキャラクターを模った、内側が空洞の紙製巨大人形、又は素焼きのつぼに飾りを施したもの。その中にお菓子やちょっとした玩具・果物等を詰めてロープで上から吊す。一方を固定してもう片方を誰かが引っ張る場合もあるし、ロープの両端を二人で引っ張っる場合もある。上下左右に動くピニャタを、小さい子は目隠しなしで、大きい子(時に大人)は目隠し状態で棒でもって叩く。通常、最初に大抵ぐるぐる〜っと体を回され、日本のスイカ割に似ている。
ほどよく目が回ったところで、周りを輪のように取り囲んだ仲間が『ピニャタの歌』を歌い出すから、それに合わせて棒を力任せに振りまわす。歌声やキャー、という声に混じって、「もっと上!」とか「もうちょっと右!」とか誰かしら声を張り上げてくれるから、それを頼りにピニャタが破れるか割れるかするまで、小さい子から順番に叩いていく。ピニャタからバラバラと中身がこぼれ落ちると、みんなで競って拾い集めてお・し・ま・い。
クリスマスシーズンと子供のお誕生日にこのピニャタは欠かせない。)


これがピニャタだ!

「オトカ、ちょっと頭おかしいんじゃない?」

こちらにチラリ、と呆れた眼差しを向けるロサウラ。私はめげずに続ける。

「ねぇ、前から何度も言ってるけど、ロサウラはイベントを企画する才能があるからさ、骨をテーマにいくつか考えてみてよ、ね。そうだ、全部で何人くらい招待しようか…。」

すると、彼女は狂ったように笑い出した。

「ガハハハハハハ。オトカってやっぱり変! ガハハハハハハ…。」

「………。」

一方的に親心を笑われ、自尊心を傷つけられた私。

「冗談で言ってみたけど、まさかこれほどうけるとは思わなかった…。」

と、守りに入ろうとした。

「いやいや目がマジだった。相変わらず親馬鹿ダネェ。ガハハハハハハ…。」

彼女は笑い続け、その笑い声は中庭じゅうに響きわたった。

そんな彼女を恨しそうに見みつめながらも、頭はすでに招待客のことで一杯の母・音可あった。

  


このページのトップに戻る

エッセイコーナーのトップに戻る

トップページに戻る