一期一会 バス編

(4)ハンドクリーム

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隣町の友達の家に遊びに行ったときに、手土産のフルーツを買いに八百屋さんへ。
種類も豊富で、ほとんどが量り売りでした。買ったのは私の大好きなマンゴー。

 メキシコと日本。メキシコに行ったことのない人でも予想がつくとは思いますが、気候は大きく異なります。私がクエルナバカを訪れた3月は、メキシコでは春が始まり(といっても、すでに夏のように暑い)、色とりどりの花が咲き乱れます。一方、日本で私の住んでいる所ではまだ雪が降り、渡墨直前にも根雪のせいで自転車のタイヤがスリップし、転んで青あざを作る始末。でも、メキシコで私が一番苦戦したのは暑さではなく“乾燥”でした。

 メキシコには雨季と乾季があるのですが、私が行った3月はちょうど乾季で、気温は高くても湿度が低いためカラッとしていて、いやな暑さがありません。けれど、メキシコに比べれば湿度の高い日本で暮らしていた私の肌はその乾燥のためにぼろぼろになってしまいました。シャワーの後はもちろん、とにかくまめにクリームを塗ってあげないと肌はどんどん荒れるばかり。

そう、あの日もバスを待ちながらハンドクリームを腕や手にぬりぬりしていました。街まで出て、フィエスタ(語学学校内での簡単なパーティ)もあることだし、ちょっとしたアクセサリーを探そうと思っていたのです。まもなく目当てのバスが来て、いつものようにお金を払ったものの、バスの中は人でいっぱい。立っている人も多く、もちろん座ることなど不可能でした。そこで私は仕方なくバスの入り口付近にあるポールにつかまることにしました。

バスが発進して最初のカーブで事件は起きました。バスは大きくカーブを描き、車体が大きく揺れました。クリームでつるつるの私の手はポールをしっかり握りきれず、体はくるりと回転し、バスの入り口のほうへと投げられてしまったのです。私は「やばい、落ちる!」と思ったのと同時に、「ぎゃ〜〜〜〜」という叫び声をあげていました。結果的には私のたくましい両足と、何とかポールを握りつづけた両手によってバスから投げ出されずにすみました。メキシコのバスは入り口(多くは出口も)を閉めないことがほとんどなので、もし道路に放り出されていたら・・・と考えると恐ろしいです。そんな私の惨事を見ていた乗客の一人が私をバスの奥のほうへと導いてくれ、手すりにつかまるよう配慮してくれました。あれ以来、乗り物に乗る前にはハンドクリームを塗らないようにしています。また、ハンドクリームも含めクリーム類は保湿性の高いものを選んで頻繁に塗る必要がないように心がけています。皆さんも気をつけてくださいね。


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